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 大和市議会 小田の一般質問

 *実際の質疑では、大項目(テーマ)ごとに、まとめて質問したり、まとめて答弁している場合があります。ここでは読みやすさを重視して再編集し、質問の直後に答弁を記しています。正しくは、市議会HPの会議録をご参照ください。

 *「★」印は、市側の答弁のなかで、私がポイントだと捉えた部分です。

平成27年12月議会

1.魅力ある街づくり 

 

 「海を感じる、日常へ。 横須賀という選択。」

 

 こんなタイトルが記され、家族連れが海岸で戯れる風景写真が表紙となったパンフレットが10月26日、自宅マンションにポスティングされていた。開けてみると、横須賀の魅力がふんだんに紹介されている。

 

 「『東京・神奈川ファミリータイプが手ごろに買える街 第1位』に」「治安が良い!」「沿岸漁業は県内1位」「神奈川県内の市でNo.1の『公園』のまち」…。こんなことが書かれている。

 

 パンフレットでは、近隣や県内の市とのデータ比較も盛り込んで、住む街としての魅力をアピール。子育て・教育面でのメリットやアクセスの良さ、市内施設を紹介し、同市に住みたくなるよう工夫している。

 

 同市に、パンフ作成の狙いを尋ねたところ、「横須賀は市外の住民によく知られておらず、不便だとのイメージも持たれている。まずは魅力を知ってほしい」とのことだった。市と商工会議所、京浜急行で構成する「横須賀”住”魅力発信プロジェクト実行委員会」でパンフをまとめ、都心への距離が横須賀市と同程度の県内の地域を対象に、26万部をポスティングしているそうだ。

 

 日本全体では長期的に、人口減少や都市消滅の可能性が懸念されている。わが街の魅力を他の地域に「発信」することで、移住を促そう。この取り組みは、自治体間の競争が熾烈になっている状況もうかがわせている。本市も負けてはいられない。人口の社会増を促すため、市内だけではなく、他自治体の住民への発信が必要だ。

 

 本議会の開会日、市から「まち・ひと・しごと創生総合戦略の策定」について、議員向けの説明会があった。その資料では、本市の考え方として「少子化対策の充実など、人口の自然増を促す取り組みを総合戦略の中心に据えたい」としている。その上で、「交流人口の拡大や定住志向を高めていく取り組みも重要である。まちの魅力を市内外にPRすることによって、社会増を促す取り組みも取り組んでいく」と表明している。

 

 この方針については、私自身まさに賛同するところだ。その際、この横須賀市のパンフのようなものを本市でも作成できれば、「まちの魅力の市内外へのPR」に資すると考える。

 

 さて、大和市の特色とは何か。交通の利便性の良さがまず挙げられる。一方、残念ながら「特徴がない」との声を聞くこともある。そこで伺う。

 

①地方創生の推進にあたり、大和市の強みをどのように捉えているか

■大木哲市長

 自治体に策定が求められている「市町村まち・ひと・しごと創生総合戦略」については、地域の実情を十分に分析しながら、街の魅力を活かした人口対策をまとめあげていけるかが焦点となっていることから、自然増と社会増という2つの側面に留意したうえで、地方創生の展開に活用できる大和市の強みを見極めていくことが大切な要素になってくる。

 

 私は常々、大和市は日本で一番「コンビニエンスストア」のような街だ、と述べているが、それを今日述べると大分時間がかかってしまうので、今述べた強みの中でいくつか述べさせていただく。

 

 本市の強みとしては、★本市には「健康都市」実現に向けた取り組みの中で進めてきた不妊不育症治療費の助成制度や、第三子にかかる給食費の無料化など、出産や子育てを希望する皆様への連続した切れ目のないサポート体制があり、県内でもきわめて充実した環境を築き上げることができたと捉えている。

 

 こうした取り組みの効果の一端は、約10年前に1・1台、世界的にも低い水準だと思うが、合計特殊出生率が1・4台にまで伸び、神奈川県内19市のなかで1位になるなど、効果として実際に現れており、人口の自然増、私はこの自然増が一番重要だと思うが、自然増という視点でも有利な状況になっていると言える。

 

 また、本市の強みとしては、★今、議員からも指摘があった交通の利便性が高いことが挙げられる。コンパクトな市内には、私鉄3線が乗り入れ、8つの駅がバランスよく配置され、東京都心をはじめ横浜など都市部へのアクセス性に優れている。駅から半径1キロ圏内に住む市民の割合を示す鉄道人口カバー率は、神奈川県内19市で最も高く、80%を超えている。これは大変な数字だ。東京都内でも江戸川区などは超えていない。東京都を除く関東圏でみても、トップクラスの水準となっている。

 

 さらに、これが「縦糸」とするならば、「横糸」もしっかりしようと考えたところだ。本市では交通の利便性を一層高めるため、コミュニティバスのルートを縦横に張り巡らせ、神奈川県内では最も充実した運行網も築き上げたところだ。

 

 このほかにも、大和市内には神奈川県内の他の自治体に比べ、★地形が平坦で自転車の移動が簡単にできるなど、今後、超高齢化社会がさらに進む中で、誰もが住みやすく体に優しい街であるという特性も兼ね備えている。

 

 さらには、災害列島とも呼ばれる日本にあって、他の自治体に比べ、地震による津波やがけ崩れ、台風や集中豪雨による土石流など、★大規模な自然災害のおそれが少なく、安心して暮らせることも本市の強みであり、住みやすい街としてこの上ない環境が整っていると考えている。

 

 全国的にみて、自然災害の少ないところの方がむしろ少ないのではないかな。大和市を中心としたこのエリアは本当に自然災害に強いエリアだ。

 

 奈良県の明日香村とか桜井市とか、その辺も強い。明日香村の村長と話したときに、明日香村では災害らしい災害が記録上ほとんど残っていないということだ。ご存知のように、聖徳太子がお生まれになったところだ。そういう意味では日本を代表するような災害に強いエリアに大和市があると言える。

 

 さらに、泉の森をはじめとする都市部に残された貴重な自然のほか、子供が遊び、スポーツも楽しめるゆとりの森やスポーツセンター。大和市の顔として来年11月にはいよいよオープンを迎える文化創造拠点など、コンパクトな街に魅力あるスポットを多く備えており、こうした数々の魅力的な地域的資源も活用しながら、実効性のある「大和市版総合戦略」を策定していく考えだ。

 

 

②横須賀市のようなパンフレットを作成し、まちの魅力をPRすべきと考えるが、どうか

■政策部長

 横須賀市が配布しているパンフレットについては、自治体に人口減少対策が求められている状況にあって、街の魅力を分かりやすく伝えるものであり、これまで行政が作成してこなかった新たな切り口であると捉えている。

 

 自治体間競争がますます加速する中では、本市においても、人口の社会増を促す取り組みが欠かせないと捉えられることから、充実した子育て環境や、交通の利便性など、★東京圏において屈指の暮らしやすさを有している大和市の魅力を市内外に発信していく際の参考にしてまいりたいと考えている。

 

 

 

 非常に丁寧なご答弁をいただいた。今、大木市長が答弁したことはその通りだ。反面、なかなか、このことが市民に伝わっていないのではないか。不妊不育症の助成制度や第三子の給食費無料化をはじめとした本市の取り組みは、少子化対策や子育て支援として優れた取り組みだと考える。横須賀市のパンフのようなものを本市でも作成できれば、前面に打ち出すこともできるだろう。

 

 さて、本市はベッドタウンである一方、「ゆとりの森」を含め、自然が豊かだ。市内の8駅の名前の多くには、「林」「野」「桜」といった自然にちなんだ言葉がちりばめられている。なので、私としては、「癒しの街」というコンセプトを新たに打ち出してはどうかと考えている。首都圏で働いて戻ってきたサラリーマンが、緑あふれる自然で癒される街。そんな理解が広まれば、社会増もさらに進むのではないかと考える。ちなみに、千葉県流山市では「都心から一番近い森のまち」をキャッチフレーズにしている。

 

 市外への発信では、佐賀県の武雄市を例に挙げたい。武雄市は、樋渡啓祐・前市長がいわゆる「TSUTAYA図書館」を全国で初めて導入するなど、斬新な施策を多く実施したことで、メディアにも多く取り上げられ、市自体の認知度が上がった。

 

 この図書館はこの夏、リニューアルオープンした平成25年4月からの約2年半で、来館者数は200万人を突破したそうだ。武雄市は人口約5万人の小さな都市だから、他市・他県からの来館者が多くを占めると推測される。つまり、「観光資源」は、自治体の工夫次第で作りだすことができるのだ。

 

 2020年には東京オリンピックが行われる。海外から国内へ多くの観光客が来るだろう。大和市は会場から遠くないので、日帰りで足を伸ばしてもらうことは可能だと考える。

 

 日本青年会議所では、今後、各地域のJCを中核として地方自治体などと連携して、観光客を中心とした交流人口の増加に取り組むことを検討している。その勉強会に参加したのだが、面白かったのは「外国人観光客向けのツアーガイドでは、マンホールの蓋ですら紹介されている。外国人の目線は日本人とは違う」ということだ。

 

 たとえば、外国人の日本に対するイメージは、俗に「フジヤマ、ゲイシャ」と呼ばれる。富士山と言えば、大和市でも綺麗に眺められる場所は多い。特に桜ケ丘エリアをはじめとした南部地域は、空気が澄んでいる冬には富士山がよく綺麗に大きく見える。

 

 東京オリンピックは空気が澄んでいない夏に開かれるが、時期を問わなければ、「都心からちょっと足を伸ばすだけで富士山がきれいに見える街」とアピールすることも不可能ではない。外国人にとっては、「富士山と言えば静岡県や山梨県」という固定観念はないはずだ。

 

 先入観にとらわれず柔軟な発想で大和市の魅力を洗い出し、市内外に発信していただきたい。本市が実施している「市民討議会」で、市の魅力を精査すれば、面白い発見が出てくるかもしれない。そう考える。パンフレット作成と合わせて、是非、ご検討いただければと要望する。

 

 

2.文化創造拠点と健康創造都市やまと

 

 プライベートな話になるが、私はこの夏、長崎県佐世保市のテーマパーク「ハウステンボス」に足を運んだ。訪問して初めて知ったが、ハウステンボスは、「健康と美の王国」を今年5月にオープンした。園内には、来場者の健康状態を確認する「健康クリニック」や、サプリメントと健康食品を多数揃える「健康ストア」、ヒーリングルームでくつろぐことができる「健康サウンドオブヒーリングラウンジ」があった。

 

 本市に「輸入」できると考えるのが、「健康クリニック」や「健康カフェ」だ。たとえば、同園の健康クリニックでは、「血流・血圧」「脳年齢」「肌年齢」「血管年齢やストレス」「頭皮チェック」など様々な測定ができる。体のゆがみやバランスで将来の姿を予測する「姿勢・身体動作分析」や、骨の健康度をランキング化する「骨健康度測定」まであった。

 

 私も、いろんな健康診断を受けてみた。特に「脳年齢」や「肌年齢」などの測定は、一般的な健康診断にないものだ。ちなみに、私の脳年齢は実年齢より4歳若い「36歳」、肌年齢は8歳上の「48歳」という結果だったが、ゲーム感覚で楽しめた。仲間と一緒に測定すれば、「私の方が若いわよ」などと会話が弾むのではないか。

 

 文化創造拠点は、市内外から多数の人が集まると見込まれる。4階を健康関係のコーナーにするということだが、このコーナーに、「健康クリニック」のようなものが設置できれば、市民にとっても便利だし、他市の住民に「健康創造都市やまと」をアピールする良い機会ともなるだろう。

 

 その際、体重、血圧といった一般的なものだけでなく、「脳年齢」などゲーム感覚で楽しめる測定器も加えれば、高齢者だけでなく、若者も含めた市民全体に気軽に使ってもらいやすくなる。リピーターも増えると考える。

 

 ところで、テーマパークの運営では、リピーターの確保が至上命題だ。「何度も行きたくなる施設」でなければ、来場者数の増加は見込めない。だからこそ、各テーマパークでは、あの手この手で新規イベントを開催している。

 

 もちろん、本市の文化創造拠点では、様々な講演や音楽会などが行われるので、それ自体が新規イベントのような位置づけだろう。ただ、前例踏襲で毎年同じことをやるだけでは、市民から飽きられてしまうかもしれない。賑わいのある場所とするためには、工夫を重ね、来場者を文化創造拠点のファンにすることが大切だ。

 

 私は、賑わいのある街づくりの起爆剤として、文化創造拠点には、大変期待をしている。一方で、高額な費用もかかっている。この定例会に上程されている議案によると、土地・建物の取得費用は「芸術文化ホール」など計4施設で合計147億円に上り、昨年6月に本議会で議決された時点よりも26億円、率にして22.1%も上昇している。「賃金上昇や材料費の高騰などが原因」とされるが、コストに見合った成果を挙げなければならない。

 

 さて、「こけら落とし」となる来年11月3日の開館記念イベントは、市民や関係者が多数集まれる楽しいものにしてほしい。また、芸術文化ホールを使用する最初のイベントは、本市にふさわしい格調高いもので、ホールの機能を十分に生かしたものであってほしいと切望する。そこで伺う。

 

①文化創造拠点に、より多くの人が訪れるための工夫について

②健康図書館における取り組みについて

■大木市長

 関連があるので一括して答える。本市の目指す健康都市の実現にとって、文化創造拠点に整備する健康をコンセプトにした図書館は重要な役割を果たすものと捉えている。特に、4階の健康コーナーはその象徴となるもので、★健康や医療に関する図書の配架、健康をテーマにした講演やレファレンスの実施、健康状態をチェックできる機具の設置などを予定している。

 

 市民の居場所となる心地良い空間に加え、これら健康に特化したサービスを行うことで、これまで図書館を利用したことがない方にも、足を運んでいただけるものと期待している。

 

 文化創造拠点には、質の高い芸術を鑑賞できる文化芸術ホール、子供たちの体と知能を育てる屋内こども広場、学びと交流の場でもある生涯学習センターなどが整備される。貴重な文化財や歴史資料を展示するコーナーの設置をはじめ、文化情報を発信するFMやまとやイベント観光協会も入居する予定だ。

 

 このように数多くの機能が一つの建物に入ることは、極めて珍しく、そのことが大きな付加価値となって、まさに文化のテーマパークのような施設として、楽しさやワクワク感をもって利用していただけるものと考えている。さらに、これら一つ一つの施設や事業が連携することで、文化創造拠点の魅力がさらに高まり、小さなお子さんからシニア世代の方々まで、多くの方が繰り返し訪れる場所になるものと確信している。

 

 

③文化創造拠点の開館記念イベントについて

■文化スポーツ部長

 文化創造拠点の開会日である来年11月3日には、芸術文化ホールのメーンホールを会場した記念式典を開催する予定だ。招待させていただく来賓や市民の方々には、★オーケストラの演奏でホールの音響を楽しんでいただくなど、施設の素晴らしさを感じていただける内容にしたいと考えている。

 

 また、開館後一定の期間は、「開館記念」と銘打った事業を行う予定で、芸術文化ホールでは、市民の団体が企画・運営する事業を月に2回から3回のペースで開催する。これらに加え、文化創造拠点の開館をより多くの方に祝っていただけるよう周知、PRにも力を入れて参る。

 

 

 丁寧な答弁をいただいた。例えば、私が住んでいる桜ケ丘は駅の東口も西口も空きテナントが相次いでいる。たとえば、こういう場所に、健康カフェや健康レストランなどがあると、大変良いのではないかと思う。これは(周辺住民からの要望ではなく)個人的な考えだ。

 

 大和駅から文化創造拠点に向かうプロムナードは、既存の商店街のお店が皆、背中を向けてしまっている。来場者がプロムナードを通りすがるだけで、地元の商店街にお金を落としてくれないと勿体ないわけだ。商店会や商工会議所とも協力しつつ、賑わいが出るよう工夫していただければと要望する。また、大和駅周辺の商店街のアーチも老朽化が進んでいる。補修や改修などで協力をしていただければと思う。

 

 文化創造拠点の皮切りイベントについては、オーケストラの演奏などについて説明があった。是非、格式高いイベントしていただければと要望する。

 

 図書館をめぐって、私は過日、東京都のJR中央線・武蔵境駅前にある「武蔵野プレイス」を個人的に視察した。同館は、武蔵野市が平成23年に開設した。生涯学習、市民活動、青少年活動の3支援センターと図書館を兼ね備えた複合施設であり、大和市の文化創造拠点と似ている。こちらも、駅チカだった。

 

 同館の昨年度の来館者数はなんと164万人。1日平均で5000人を超えるそうだ。テントウムシのような独特のフォルムに驚かされた。芸術関係のコーナーの入り口のガラス扉には、詩人や哲学者らの名言がお洒落に貼られていた。アートでポップな雰囲気が感じられ、通りすがるだけでも楽しいものだった。文化創造拠点も、書籍の開架や見せ方で様々な工夫を取り入れてほしい。

 

 本日の町田議員の質疑でも、文化財を一時的に移設展示する考え方が示された。大変良いアイデアだと理解する。是非、リピーターを増やす取り組みをどんどん増やしていただきたい。

 

 本定例会に上程されている一般会計補正予算案には、黒岩祐治神奈川県知事肝いりの「未病センター」の関連経費も計上されている。健康福祉センター内にコーナーとして設置される方針とのことだ。「未病」という言葉は「未だ病にならざる」という東洋医学のものだ。ここでは、西洋医学だけではなく東洋医学についても、重視してほしいと要望する。

 

 

3.教育

 

(1)全国学力・学習状況調査

 全国学力・学習状況調査の平成27年度の結果が、9月29日の教育委員会で公表された。昨年度も実施された小中学生の国語・算数および数学の計8科目とも、全国平均との差が縮まっている。中学校の国語Bは全国平均を若干上回ったということだ。

 

 まだ、全般的に県や全国の平均を下回っており、学力低迷傾向は脱していないものの、昨年度より改善したことは、大変喜ばしいし、教育委員会や先生方の努力にも敬意を表するところだ。

 

 一方、今年度に新設された小学校の理科については、全国、神奈川県の平均正答率をいずれも2ポイント強、下回った。同時に行われたアンケートの結果によると、「理科の勉強は好きだ」と回答した小学生は約48%で全国平均よりも8ポイント、中学生は28%で2ポイント、それぞれ下回った。理科離れの傾向が浮き彫りになっている。

 

 全国学力・学習状況調査は、毎年の結果を分析することも重要だが、特定の学年の成績がその後、向上したのかどうかを把握することも大切だ。毎年度の結果分析だけに終わらせていると、ひょっとしたら、もともと学年ごとに成績のバラつきがあるかもしれないからだ。

 

 つまり、小学6年時にテストを受けた児童らが、3年後の中学3年時点でどうなったかを検証し、結果を公表することが大切だ。そのためにも、大和市として結果を公表していない平成25年度以前のデータをホームページ上でも公表していくことが必要ではないか。

 

 さて、学力向上をめぐって、大和市では「放課後寺子屋やまと事業」を進めている。大変良い取り組みだが、気になる点が一つあった。

 

 柿本教育長は9月の教育委員会定例会で、放課後寺子屋の小学校1年生の夏休みの希望者が多かったことを踏まえて、「子育て支援の一側面としてのニーズも表れてきた。学力・学習支援を中心とするのか、居場所づくり、子育て支援を目的とするのかの設定が非常に難しい。しばらく両側面をもってやることも必要だ」と述べました。ひょっとしたら、長期的に役割や位置づけを変えてしまうのではないか。そんな懸念も私は持った。

 

 やはり放課後寺子屋は、本来の目的の通り、学力・学習支援を中心とすべきだ。子育て支援は重要だが、本事業は学力向上のために設置されている。そこで伺う。

 

①平成25年度以前の全国学力・学習状況調査の結果の公開はできないか

■教育部長

 全国学力・学習状況調査の結果を丁寧に分析し、課題を検証することは、教育指導の充実や、学習状況の改善を図るためにも大変重要だと捉えている。結果の公開については、ホームページ上に複数年の結果を載せることによる様々な影響を考慮して、単年度のみの公開としている。

 

 

②放課後寺子屋やまと事業の今後について、教育長の見解は

■柿本隆夫教育長

 放課後寺子屋やまとは、一人一人への丁寧な学習支援を通して、学習習慣と基礎学力の定着をはかることを目的として実施している。平成28年度からは、市内全小学校で全学年を対象とし、子供たちの思いや教育的ニーズにこたえていけるよう運営の工夫に努めてまいる。

 

 

(2)インターネット端末依存の危険性

 学力向上をめぐって、別の提案もしたい。それは、インターネット端末依存の危険性に関してだ。

 

 全国学力・学習状況調査の結果をめぐっては、スマートフォンや携帯電話の使用時間が長いほど、成績が低迷する傾向が全国データから浮き彫りになっている。昨年4月の調査結果に対する全国的な分析では、特に、「中学校の数学Bでは、利用時間30分未満の生徒は、利用時間4時間以上の生徒より、正答率は18・6ポイントも高い」といった傾向が出ている。

 

 地方自治体でも調査・分析が行われている。仙台市教委と東北大研究者、いわゆる「脳トレ」で有名な川島隆太教授らが昨年4月、市内の中学生約2万4000人を対象に調査・分析したところ、「勉強時間は30分未満だがスマホなどを持っていない」生徒と、「勉強時間2時間以上だが通信アプリの使用時間が4時間以上」の生徒では、前者の方が成績が良かったという結果が出た。大変驚いた。

 

 この報告書では、「通信アプリの使用時間が長くなるほど、習得した学習内容が消えた可能性がある」「学力への影響力は、通信アプリの使用時間の方が、勉強時間よりも圧倒的に強い。通信アプリの使用時間が、直接的に成績を下げる方向に作用している恐れがある」と分析している。

 

 通信アプリにハマった結果、勉強時間が短くなるという因果関係ではなく、通信アプリを利用していること自体が、学習に悪影響を及ぼすというのだ。「朝起きられなくなる」「日々眠くなり授業に集中できなくなる」といった背景があるのかもしれない。

 

 こんな状況を踏まえ、横浜市教委では、「家族のいるところで使う」「食事時は使わない」「夜9時以降のメールはやめる」といったリーフレットを保護者向けに配布している。兵庫県の多可町の教育委員会では昨年7月から、小中学生に対し「午後9時以降のLINEなどの使用禁止」を提唱している。愛知県刈谷市では昨年2月、小・中学校の校長とPTA連絡協議会などが指針をまとめた。

 

 本市でも、スマホやLINEなどのSNSや携帯ゲーム機をなるべく使用しないよう取り組みを強化できないか。たとえば、リーフレットを作成して児童・生徒や保護者に啓発する。「スマホを使わない日・週間」、いわゆる「脱スマホデー」を制定し、インターネット依存の危険性について定期的に考えてみる。方法はいろいろある。そこで伺う。

 

①スマートフォンや携帯電話など、インターネット依存防止の取り組みについて

■教育部長

 教育委員会が本年7月に行った情報モラルに関する実態調査では、「食事中や深夜でもゲームや携帯電話、スマートフォンを使ってしまう」と答えた割合は小学校4年生で15%、中学校3年生で37%という結果が出ている。この調査結果は、各学校に対して詳細な報告を行い、実態に応じた指導につなげているとともに、保護者会や学校だよりなどで、長時間利用による健康被害について、家庭への注意喚起を図っている。

 

②「脱スマホデー」など、本市独自の取り組みは進められないか

■教育部長

 平成26年度末に教育研究所は、大和市の情報教育の体系に基づき、禁止や制限ではなく、適正な活用に必要な知識と判断力の育成に重点を置いた情報モラル指導事例集を策定し、現在各学校で指導に活かしているところだ。また、教育委員会が推進している情報モラル教育支援事業においては、生徒自身が情報機器の利用方法や使用時間について振り返り、よりよい使い方を話し合う活動に取り組んでいる。

 

 

(3)小学校英語

 「中学、高校、人によっては大学で計10年間も英語を学ぶのに、なかなか身につかない」「日本の英語教育は文法や読解が中心で、会話が身につかない」…。

 

 私が学生だった数十年前にも、そのような指摘がなされてきた。この状況を変えようと、政府では、読み書きといった「受験英語」ではなく、コミュニケーションとしての英語力を培う方向に舵を切っている。

 

 英語教育は大変重要だ。国際化が進むなか、母語以外の言語を身につけることは、スキルとして役に立つ。明治時代以降の日本の近代化も、西欧の技術や文化を輸入することで進んだ。ですが、英語を身につける上では根本的には母語、つまり国語や日本語の教育が最重要だ。

 

 英語で道を教えるといった単なる日常的な英会話は別として、たとえば英語圏に留学するとか、企業に入って英語でビジネス文書を作成するとか、英語で議論するといった「ホンモノの英語力」を養うためには、一定の読解力や思考力が前提となる。母語で論理的に思考できない人が、外国語で深くものを考えることはできない。英語力は、母語である国語力以上に伸びないのだ。

 

 日本人なら日本語で会話をすることができる。一定の経験や訓練を積めば、英会話や簡単なコミュニケーション能力を習得することも可能だろう。だが、英会話にしても、本格的に身につけようと思ったら、かなり長時間、「英語のシャワー」を浴びなければならない。英語で話さなければならない環境に身を置いて必要に迫られなければ、容易に身につくものではない。

 

 私は文部科学省が2年前に提示した「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」については、かなり慎重な立場だ。計画では、「中学校の英語の授業は原則的に英語で行う」としている。身につける英語の目標として、中学校では「短い新聞記事を読んだりテレビのニュースを見たりして、その概要を伝えることができる」と例示している。一部の生徒を除いて、全体としてそのレベルに達するのは、難しいのではないか。要求水準が高すぎると、大量に落ちこぼれが出てきてしまう懸念もある。

 

 大和市では、国の計画を先取りする形で小学校英語を充実していくとのことだ。1コマ15分のモジュール授業を活用して、授業時数を現在より倍増していくとしている。

 

 中央教育審議会教育課程部会の資料によると、英語教育強化地域拠点に指定された小学校では、短時間授業によって「英語に慣れ親しむ機会が増えた。話す、聞く力がついてきた」との成果も報告されている。一方、「実施する時間帯の確保」や「系統だった学習効果」も課題として挙げられている。

 

 ペンシルバニア大准教授のバトラー後藤裕子さんは、自著「英語学習は早いほど良いのか」のなかで、「外国語環境では、学習開始年齢はそれほど重要ではない。学習時間数と学習の質が習得の程度を左右する」と指摘している。授業の質も高めていかなければならない。

 

 教員養成も課題だ。現在の小学校の先生は、英語を教える技術をきちんと学んではいない。報道によると、小学生に教えるために、自費で英語教室に通う先生も全国的には相次いでいるそうだ。

 

 そもそも、大和市の状況を考えると、まず「読み書き・そろばん」といった国語・算数の基礎的な学力を向上させることが喫緊の課題だと捉える。そこで伺う。

 

①英語の授業時数増加による他教科の授業時数への影響は

②朝の読書活動や国語の学習は、今後どうしていくか

■教育部長

 英語の授業時数増加は、主に短時間授業の増加であり、学校の状況に応じて、創意あるカリキュラムを編成し、「朝の読書活動」とバランスを取りながら、朝や昼、帰りの時間を活用して行う。国語の学習については、言語活動の充実を図るうえで言語感覚を養い、伝え合う力を高めることや、母語の言語文化に触れ、感性や情緒を育むことを重視し、これまで同様、工夫ある授業を展開していく。その他の教科においても、学習指導要領において定められた授業時数を確保している。なお、文部科学省は平成32年度を見据え、新たな英語教育を実施するため、英語教育の充実、強化を進めるとしている。

 

 

③指導体制や教員の養成はどうしていくか

■教育部長

 指導体制については、通常授業は担任と外国語活動指導助手が、短時間授業には担任が指導にあたる。教員の指導力向上については英語教育スーパーバイザーや小学校英語指導者資格所有者が各校に出向き、授業参観や校内研修を通して図っていく。

 

 

 答弁をいただいた。以下は要望となる。まず、学力向上についてだが、小学生の理科離れに関してだ。ノーベル賞受賞者の根岸英一さんを冠した賞、たとえば「根岸賞」や「大和版ノーベル賞」を新たに市内で創設し、理科のコンクールや夏休みの自由研究で優れた作品に、根岸さんから直接、表彰状を授与する。こんなことが実現できれば、子どもたちは大変嬉しいだろうし、励みにもなる。是非、検討していただければと要望する。

 

 インターネット端末依存の危険性については、児童生徒だけでなく、保護者も対象にした啓発活動を今以上にさらに強化してほしいと要望する。

 

 小学校英語についてだが、朝日新聞の昨年11月26日付紙面によると、ノーベル物理学賞受賞者の益川敏英さんは、要約すると、こう話している。

 

 「若いうちから英語に追いまくられていたら、物理や数学が本格的に好きになる時間が持てなくならないか。英語の4技能が身についたとしても、逆に専門分野の力がおろそかになったら元も子もない。英語はあくまでも、他者に何かを伝えるための道具、手段だ」

 

 こういうことだった。今の発言にあるように、英語を重視するあまり、他教科を軽視してはならないわけだ。英語を身につける上でも、そのベースは母語だ。まず国語の授業を充実してほしいし、朝の読書活動に支障が出ないようにしてほしい。その点は強調したい。

 

 

4.政治的中立性

 

 18歳に選挙権が下がる今、教育現場をはじめ行政が政治的中立性を確保することは、従来以上に重要性が増している。ただ、本市では、きちんと政治的中立性が保たれているのだろうか。その点を検証していく。

 

 11月15日、桜ケ丘学習センターで、「平和・民主・革新の日本をめざす大和市の会」の主催のもと、「第13回ライブ&トーク 平和をねがう市民のつどい」が開かれた。このイベントの主催団体は、略称で「大和市革新懇」という。以下、略称で話を進める。

 

 大和市革新懇等のブログによると、ドキュメンタリー映画「ザ・思いやり」が上映され、防衛省の予算に計上されている在日米軍駐留経費、いわゆる「思いやり予算」に関する講演があったとのことだ。これは大和市や市教委が後援名義を出していた。

 

 大和市革新懇は、会則で「全国革新懇、県革新懇の提起する活動にそって活動をすすめる」と規定している。つまり、全国革新懇や県革新懇の下部組織、地域単位の組織との位置付けだ。

 

 さて、革新懇は共産党系の政治的団体の一つだ。以下、諸資料から立証していく。

 

 まず、筆坂秀世・元共産党政策委員長は、著書『日本共産党』で「団体の中枢に共産党員が座っている」と指摘している。確かに、全国革新懇の代表世話人には、共産党幹部の志位和夫委員長や山下芳生書記局長のほか、共産党系団体の委員長、会長らが名を連ねている。

 

 警察官向けの書籍を発行している立花書房の『新・日本共産党101問』によると、昭和55年に共産党と当時の社会党の関係が決裂したことを受け、当時の共産党の宮本顕治委員長が、第15回党大会で「革新統一懇談会を全国的、地方的につくることを提唱する」と表明。これを受けて、全国革新懇が発足した。その後、全国的に地域単位の革新懇が増えていく。

 

 共産党の機関誌『前衛』によると、志位委員長は平成20年9月号で「革新懇運動は統一戦線である。共産党の援助を受けて科学的社会主義を学ぶ組織である」と指摘している。昨年7月号では「革新懇運動は、日本を変える統一戦線に発展させていく懸け橋として役割を担っている」と発言している。

 

 共産党の神奈川県委員会は平成17年、「革新懇と九条の会は両方必要で、なかでも革新懇づくりが土台になる」という考え方を党支部に呼びかけたそうだ。「県委員会主催の担当者会議や専従者会議が、神奈川の革新懇づくりを進める大きな力となっている」ということだ。

 

 平成18年に行われた共産党の第24回党大会では、「わが党は統一戦線を基礎に民主連合政府を目指している。地域・職場に網の目のように革新懇をつくり、発展させることは、わが党の綱領的な任務である」と明記している。つまり、共産党の方々にとって、この「革新懇運動」は大変重要な任務と位置付けられると言えるだろう。

 

 「しんぶん赤旗」によると、全国革新懇は今年9月28日、「共産党の提唱を心から歓迎し、みずからの課題として追求します」として、「戦争法」廃止の国民連合政府の樹立を求める呼びかけを発表した。

 

 さて、大和市革新懇のブログでは、「大和でも全国でも『戦争法案NO!』の声をあげよう!」「厚木基地で訓練するな!」「厚木基地を撤去させよう!」「沖縄に新基地は要らない!」などの見出しが躍っている。

 

 大和市革新懇は、今年4月の神奈川県知事選で共産党が推薦する岡本一候補を推薦した上で、「岡本氏の勝利に向け、力を尽くします」と表明。選挙運動にも関わっているとみられる。

 

 以上、大和市革新懇をはじめとした革新懇は共産党が主導し、深く関与している政治的団体であることは、ご理解いただけたかと存ずる。

 

 さて、「大和市の後援名義に関する要領」の第2条では、後援する団体について「特定の政党、宗教、その他の政治的団体及び宗教的な団体でない」「特定の政党、宗教その他の政治的団体及び宗教的な団体を支持又はそれらの活動に関係するものではない」と定めている。

 

 大和市や市教委が、大和市革新懇が11月15日に開催したイベントに対する後援名義を承認したことは、この条文に違反していることは明白だ。そこで伺う。

 

①「平和・民主・革新の日本をめざす大和市の会」の事業目的、後援名義の使用承認について

■文化スポーツ部長

 本市の後援名義の使用承認については、大和市の後援名義に関する要領に基づき、申請した団体が広く市民の福祉向上に寄与する団体であるかどうかを判断した上で、申請された事業について、その都度、審査を行い、承認している。当該団体から申請のあった「第13回ライブ&トーク 平和をねがう市民のつどい」の事業目的は、「多くの市民とともに、平和の大切さを認識するため」となっていて、要領に基づいて審査した結果、広く市民を対象とした平和推進事業と捉えて、承認したものだ。

 

②当該団体は特定の政党を支持し、関係していると考えるが市の見解は

■文化スポーツ部長

 「平和・民主・革新の日本をめざす大和市の会」については、要領に照らして審査をした結果、特定の政党、その他の政治的団体ではなく、広く平和について考える市民団体であると判断した。

 

③当該団体の事業に対し、後援名義の使用承認はいつから行っているか

■文化スポーツ部長

 確認できた範囲だが、平成18年、18年度以降、当該団体が主催する事業に対し後援名義の使用を承認している。

 

④特定の政党を支持し、関係している団体への後援名義の使用承認は見送るべきだと考えるが、市の見解は

■文化スポーツ部長

 市の要領では、後援の対象となる団体の要件を「特定の政党、宗教、その他の政治的団体及び宗教的な団体でないこと」と定めているので、この規定に基づいて判断して参る。

 

 

 答弁をいただいた。大和市革新懇のイベントで上映されたドキュメンタリー映画の予告編をネットで見てみた。芸人の松本ヒロさんが、いわゆる「思いやり予算」について、「お金をドブに捨てながら、外国の市民たちを殺している。みんな不幸になっている。意味がないと思いませんか」と講釈するシーンがあった。「思いやり予算」に対する考え方は、立場によって色々あるだろうが、少なくともこの映画がバランスの取れた内容だとは思えない。市や市教委が後援する事業として、この映画の上映やこの映画に基づく講演はふさわしくないと考える。

 

 なお、私が神奈川県内の自治体に電話で問い合わせたところ、神奈川県革新懇のホームページ上で地域支部の存在が確認された神奈川県、横須賀市、小田原市、湯河原町のいずれも、革新懇が主催するイベントに後援を出した実績は確認できなかった。そもそも、団体側から申請自体が出ていないケースが多いようではある。一方、過去には茅ケ崎市が後援名義を出したケースもあったようだ。

 

 いずれにしても、大和市は平成18年以降、毎年、このイベントに後援名義を出しているということだった。他の自治体と比べても突出していることは、否定しようがない。

 

 誤解のないように付け加えるが、私は共産党や共産党系の団体が集会を開いたり政治運動をしたりすることを制限しようとしているわけではない。日本は民主主義国家だ。集会、結社の自由も認められている。どんな政治運動を展開しようと自由だ。

 

 だが、行政が、特定の政党が主導し、深く関わる団体のイベントを後援するということが、ふさわしいとは思えない。それを防ぐために、大和市は後援名義の要領を定めていると考える。

 

 私は今回、革新懇について色々と調べさせていただいた。その過程で知ったことが多かったことも事実だ。行政は通常、後援の名義を出すにあたって、共産党の機関誌までは調べないだろう。そこまでを求めているわけではない。ただ、依然として、この本市の審査が甘いのではないか、という事実は指摘しておきたい。

 

 今回、このイベントへの名義後援が市の要領に違反しているのではないか、ということが明らかになった。今後は、二度と市が自ら定めた要領に違反した承認をしないよう、強く強く求めるところだ。そうしていただけなければ、「大和市は特定の政党やその運動を後方支援している自治体だ」との誤解を受けかないからだ。

 

 政治的中立性については、今後もチェックしていきたいと表明し、質問を終わらせていただく。御清聴ありがとうございました。

平成28年3月議会

 1.少子化対策

 

 先日、衝撃的なニュースがあった。平成27年国勢調査の速報値で、1920年の調査開始以来、日本の総人口が初めて減少したのだ。市町村の数の82%にあたる1416市町村で人口が減り、秋田県など33道府県で減少が加速した。これから本格的な人口減少時代がやってくる。

 

 市長は、施政方針演説のなかで「少子化対策こそ最も大きな課題である。今後、この状況に変化がなければ、我が国始まって以来、最大の危機が訪れようとしていると言っても過言ではない」と述べた。私も共感するところだ。

 

 市がまとめた「人口ビジョン」の素案は、大変精緻に丁寧に分析されたものだと理解する。なので、この一般質問で、本市における少子化の理由、背景についての詳細な分析はしない。ただ、一点だけ付け加えれば、大和市の人口増加は、交通の利便性の高さに支えられている側面が大きいと考える。

 

 国勢調査ではないが、地域経済分析システム(RESAS)で、首都圏の平成27年の人口増減マップを見ると、都心部に電車で通いやすい地域は、おおむね人口が増加している。一方、本市に隣接し、域内の駅がほとんどない横浜市瀬谷区は人口が減っている。都心部に通いやすく利便性が高い地域は、おおむね人口が伸びていると考えられる。

 

 なお、この参考資料につけた首都圏の人口増減マップで大和市が若干薄い色となっている。これはパソコンでカーソルを合わせた部分が薄くなっていることであり、大和市が周辺自治体よりも人口増加率が低いというわけではない。念のために付け加えておく。周辺の市と同じくらいの色になる。実際には。

 

 さて、少子化対策の対象を男性、女性、若者、子供と分類して、それぞれ私なりの提言をする。

 

(1)まち・ひと・しごと創生総合戦略

 本市でも、他の自治体と同様に、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定している。市では戦略の策定にあたって昨年12月、市議会各会派から意見を取りまとめた。重要な戦略を決めるにあたって、市民の代表である市議会から事前に意見を聴取するという手法は、政策決定のあり方として大変良いものだと評価をするところだ。逆に言えば、市議会側にも一定の責任が与えられたということでもあるのだろう。議員の一人としても、この戦略を実際の政策にどう反映していくのかを継続的にチェックしたいと考える。そこで1つ質問する。

 

①今回の戦略において少子化対策を盛り込んだ意義は?

■市長
 平成27年の国勢調査の速報値によると、5年前と比べ、神奈川県の人口は約8万人の増加、本市においても5000人近くの増加となったが、我が国全体で見ると、約95万人の人口減少となっており、この問題がいかに深刻なものであるかは、申し上げるまでもない。


 国は一昨年、人口減少に歯止めをかけ、将来にわたって活力ある社会を維持していくことなどを目的に、「まち・ひと・しごと創生法」を施行しており、本市においても法に基づき、「『健康都市やまと』まち・ひと・しごと創生総合戦略」の策定を進めているところだ。人口減少という大きな課題に対しては、自然増と社会増に関わる取り組みを両輪に据えて施策を展開していくことが求められているが、根本的な解決を図るためには、少子化対策を進め、人口の自然増につなげていくことが、必要不可欠だと考えている。
 

 そのため、私は市長就任以降、不妊不育症治療費の助成や保育所の定員拡大、小児医療費の助成対象の拡大など、子育ての段階に応じたきめの細かい支援も間断なく実施しており、合計特殊出生率が神奈川県内でトップクラスの水準に達したことも、これらの取り組みの成果と言えると捉えているところだ。
 

 今回の総合戦略においても、基本目標の一番目に「結婚から出産、子育てが楽しくなるまち」を掲げており、少子化対策として若い世代の結婚、出産、子育ての希望をかなえる取り組みに引き続き全力を注いで参る。

 

 

(2)イクメン・イクボスの勧め

 これは主に男性を対象とした議論だ。過日、宮崎謙介、金子恵美(めぐみ)両衆院議員の、いわゆる「イケメン・イケジョ夫婦」による「イクメン」論が世上を賑わせた。大変残念ながら、宮崎氏は不倫問題で議員辞職し、イクメン論は冷や水を浴びせられてしまった。ただ、その重要性は変わらない。

 

 厚生労働省が昨年8月発表した「平成26年度雇用均等基本調査」によると、育休取得率は、女性で86.6%と9割近くに達するものの、男性は2.30%にとどまっている。

 

 政府は、男性職員の育休取得率を平成32年に13%にする目標を立てている。男性の平成26年度の育休取得率は、国家公務員の場合では3.1%となる。これは大和市の男性職員の場合には同年度で6.4%ということだ。だから、国家公務員の倍に達している。大和市の男性職員の育休取得率は5年前の0%から比べると随分伸びた。それ自体は大変評価するところだが、政府の目標にはまだ程遠い状況にある。

 

 厚生労働省の「第9回21世紀成年者縦断調査」によると、「子供がいる夫婦は、夫の休日の家事・育児時間が長くなるほど、第2子以降の生まれる割合が高くなる傾向がある」ということだ。「イクメン」の促進は、少子化対策としても有効だと言えるだろう。

 

 さて、「イクボス」という言葉をご存知だろうか。私は、今年1月、平塚市内で行われたNPO法人「ファザーリング・ジャパン」の安藤哲也さんの講演を伺った。そこで初めて、その言葉、概念を知った。

 

 安藤さんは「日本企業が抱える2大課題として、長時間労働や業務の属人化がある」と指摘。「課長の仕事は他の社員が代替できるが、子供にとって父親の代わりはいない」として、働き方改革の重要性を訴えていた。

 

 行政機関である市の職員は、民間企業と比べて、「ワークライフバランス」、つまり「仕事と生活の両立」が確立されやすい土壌がある。「先ず隗より始めよ」という中国の故事成語があるが、市としても、率先垂範すべきだ。自分の経験に照らしても、ダラダラと職場に残るより、短時間に集中して仕事をした方が効率性も上がると感じている。

 

 そのためには、管理職である職場の「ボス」自体が、ワークライフバランスのお手本を示すことが大切だ。たまたま偶然だが、本日の神奈川新聞の社説では、「実践し成果を挙げていこう」。こんな見出しを掲げて「イクボス」を推奨していた。そこで一つ質問する。

 

①本市の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」素案にある「ワークライフバランスの優遇制度」とは具体的に、どのような政策を想定しているか

 

市長
 「まち・ひと・しごと創生総合戦略」においては、基本目標の一つとして、「仕事がみつかりやすく、働くことが楽しいまち」を掲げているが、男女ともに仕事とともに家庭を両立できる環境を整えることは、少子化対策や男女共同参画社会の実現にとって、非常に重要な施策と考えている。


 ご質問のワークライフバランスを推進する企業の支援策だが、国による税の優遇や補助金の交付制度、自治体による総合評価型の入札における加点や認定表彰制度の創設などの取り組み事例がある。
 

 本市においては、「第2次やまと男女共同参画プラン」に掲げているように、★まずは男女がともに働きやすい職場づくりに積極的に取り組む事業者などを認定、表彰する制度の創設について検討して参りたいと考えている。

 

 

 

(3)在宅ワーク支援

 これは主に女性を対象にした議論だ。少子化対策をめぐっては、子育て費用の負担軽減が大切だ。中でも、働きたい専業主婦を支援していくことが重要だと考えていす。

 

 私はこの1月、栃木県足利市を視察した。同市では、企業が仕事をインターネット経由で発注する「クラウドソーシング」の実証事業を行っている。実際には、市から業務を委託されたNPO法人「コムラボ」が、在宅ワーク支援を行う、という枠組みだ。参考資料の右上に記している。

 

 「コムラボ」では、子育て中のママさんを対象にライティングやデザインの講座を開催。一定の技術を身に着けさせることで、スマートフォンや自宅のパソコンでビラ作成などの業務を受注できるよう支援している。「働きたくても働けない」という子育てママの悩みを解消し、そのライフスタイルに合った仕事を地元で創出しようという試みだ。政府が進めている「地方創生」に即した大変素晴らしい取り組みだと感じた。そこで一つ質問する。

 

①在宅ワークなど働きたい主婦に対する就業支援を施策として取り入れることはできないか

 

市民経済部長
 本市における就労支援の取り組みとしては、若年者を対象としたヤングキャリアカウンセリング、パソコンを使用した体験型セミナーの開催をはじめ、ハローワーク大和と連携した就職活動支援セミナーや、「大和・あやせ就職面接会」などを実施している。


 各事業ではおおむねの対象者を示してはいるが、利用者の利便性を第一に考え、できる限り、柔軟な対応を心がけており、働きたい主婦の方に対しても、他の方の就労支援と同様、積極的に取り組んでいる。
 

 ★在宅ワークなどの誰もが働きやすい環境を整えていくことは、総合戦略の素案の目標として掲げている『仕事が見つかりやすく、働くことが楽しいまち』の実現にもつながることが期待できることから、今後、先進事例の調査・研究を進めて参りたいと考えている。

 

 

 

(4)婚活支援事業

 ここでは、対若者向けの議論をする。私が少子化対策で最も大切だと考えるのは、出産の前提となる婚姻数を増やすことだ。大和市の婚姻率は全国平均や県平均より高いものの、低下傾向にある。本市の「統計概要」によると、平成25年時点の婚姻件数は1347件だ。私が確認できた過去15年間のピークは平成13年の1744件だったが、それと比べて、4分の1弱、減ってしまった。

 

 暮らしが便利になることで、独身者にとっても不自由が少ない世の中になった。それは、結婚に対するモチベーション自体を低下させている。男性の「草食化」も進み、男女交際自体が減ってきているとも指摘される。いわゆる「世話焼き」も減り、お見合い結婚は減少している。一方、未婚者からは「結婚したいけれども出会いの場がない」といった声を伺う。

 

 まず若い男女が出会う機会を増やしていくことが必要だ。市内では、「ママプロ」といった任意団体をはじめ、商工会議所、青年会議所などで「街コン」が行われている。この度、「ママプロ」側にも話を伺ったが、「手弁当で活動している」ということだった。行政がこのような婚活事業を今以上に支援し、さらに活性化させていくことによって、婚姻数の増加、ひいては出生数の増加につなげることはできないか。

 

 私は、結婚相談所を市が直営することも検討したが、やはり民業圧迫になってしまう恐れがある。民間の活力を活かす。つまり、民間企業が行っている結婚相談所を、行政として利用しやすくする手法も、政策の一つとして考えられると思う。

 

 たとえば、和歌山県印南町(いなみちょう)や新潟県糸魚川市、新潟県湯沢町、岐阜県白川村、大阪府岬町、宮城県丸森町の6市町村では現在、東証2部上場企業である結婚相談所「ツヴァイ」の入会金を助成する事業を行っている。

 

 同社の広報担当者に尋ねたところ、「今年度は人口規模の大きい自治体にも拡大していく」ということだった。どこの結婚相談所でも良いと思うが、この手の補助事業を本市でも導入することによって出会いの場を広げることも、少子化対策の一つの有効的な手段だと考える。そこで2つ質問する。

 

①街コンに対して補助事業を行うことができないか

②民間の結婚相談所の入会金を助成することはできないか

 

■市長(一括答弁)
 婚活支援事業としても、街コンのような街ぐるみで行うイベントの参加や、結婚相談所への入会等は、結婚を希望される方にとって、出会いや交流の場を創出できることから、有効な手段の一つであると認識している。★今後は、未婚者のニーズを把握するアンケート調査や、他市の先行事例などを参考に、具体的な支援策について検討して参る。

 

 

 

(5)子育て体験授業

 これは子供向け、つまり教育面での提言だ。もう10年も前になりますが、前職のときに、岩手県の気仙医師会が行っている「赤ちゃんふれあい体験学習」を実際に見学したことがある。これは、小学5、6年の児童を対象に、超音波画像で胎児の様子を見せたり、妊婦のお腹を触らせたりする体験学習だった。

 

 病院の産婦人科長は「受精して人間が生まれる確率はすごく低い。どんな人も代表選手として生まれてきた。だから適当に扱ってよい命はない」と命の大切さや子育ての楽しさを説いていた。その上で「神聖な子供を育てるのが子育て、という意識を幼少期から体で感じさせるべきだ」と体験学習の必要性を訴えていた。

 

 このような授業は教育的見地からも、少子化対策としても大変有効だと考える。そこで一つ質問する。

 

①命の大切さを伝える教育について、本市ではどういう取り組みを行っているか

 

■教育部長
 命の大切さを伝える教育については、道徳の時間はもとより、小学校生活科の自分の生い立ちを振り返る学習や、総合的な学習の時間などで行われている。また、中学校家庭科での保育実習や総合的な学習の時間での職場体験においては、実際に幼児と触れ合う中で、子育てについて学んでいる。さらに、医師や保健師による「やまと命の教室」などを通して、子育てに通じる様々な学習を行っている。

 

<答弁を受けた要望>

 前向きな丁寧な答弁をいただいた。市長の答弁にもあったが、大和市の子育て支援策は、他の自治体よりも充実している面が多いと私は考えている。千葉県流山市は、「母になるなら流山市」というキャッチフレーズを掲げているが、本市でも是非、「子育てするなら大和市」と売り出してほしい。そのためにも、目玉となるような斬新かつ大胆な施策を取り入れ、さらなる充実を図ってほしい。こう要望する。

 

 

 

 2.資源持ち去り

   

 今年に入って、市民の方から「資源が持ち去られることで、自治会に入るべき資源回収報奨金が減ってしまい困っている」という声を聴いた。ある会合では、近隣市の民間リサイクル業者から、「大和市では本来、市が回収すべき資源ゴミが2割ぐらい持ち去られているのではないか」という話も伺った。

 

 市内では、資源回収日の朝にパトロール要員を配置して、ゴミの分別や持ち去り防止に取り組んでいる自治会もある。本市でも平成23年9月に、廃棄物の関連条例を改正し、持ち去り行為に20万円の罰則規定を設けている。ただ、刑事告発したケースはまだない。

 

 私が所属する市議会の環境建設委員会では昨年10月、新潟市のゴミ減量に向けた取り組みを視察した。新潟市の一部を管轄する新潟中央署では昨年7月、市条例違反の疑いで、79歳の無職男性を書類送検したということた。

 

 私はこの一般質問に先立って先週、集積場所から持ち去られた疑いがある古紙を集めた保管現場を調査。数日間にわたって、見張り活動やパトロールを行った。現地は、本市の北西部にある駐車場だ。資料に写真をつけているが、そこには、黒いコンテナが2つ設置されていた。一つのコンテナには新聞や雑誌などの古紙が山積みになっていた。コンテナには、「レアメタルやハイドレード」の買い取りをほのめかし、連絡先を示した怪しげなマグネットシートも貼ってあった。正規の業者でないことは明らかだ。

 

 リサイクル業界の関係者によると、平日は毎日、持ち去られた古紙がここにいったん集められるということだ。私は捜査機関ではないし、これ以上の言及は差し控えるが、集積所から持ち去ったと疑われる古紙の保管場所が、本市内に存在することは看過できない。本市でも、資源ごみの持ち去り禁止を徹底すべく、対策をさらに強化する必要があると考える。そこで3つ質問する。

 

①市内における新聞・古紙の持ち去りの状況はどうか

②新聞・古紙の持ち去りを防止するためにどのような対策を講じているか

③市として刑事告発も辞さず、強い姿勢で臨むべきと考えるがどうか

 

■環境農政部長(一括答弁)
 大和市廃棄物の減量化、資源化、適正処理等に関する条例では、持ち去りの場所で違反者を特定した場合、一回目は勧告書、2回目は命令書を発行し、命令に従わず再度の持ち去りを行った者については、警察に告発を行うとしている。これまで勧告を9件、命令を1件行っている。

 

 また、市民の皆様からの持ち去りに関する通報件数は、条例改正後の平成24年度は104件だったが、平成27年度は2月末現在で65件と減少してきている。しかしながら、一部ではまだ持ち去り行為が続いているため、本市ではその防止対策として、新聞古紙回収日に区域内を巡回パトロールしているほか、GPSを使用した追跡調査、持ち去り禁止の警告看板の設置、警察や自治会との連携、近隣市との情報交換をはかるなど、様々な対策を行っている。
 

 今後も、これらの対策を継続して実施していくとともに、命令に違反した者に対しては、刑事告発を含め、毅然とした対応で臨んで参る。

 

<答弁を受けた要望>

 答弁をいただいた。様々な対策が行われていることが理解できた。ただ、私が対策を強化するために是非行ってほしいと提言したいのは、行政処分を受けた違反業者の氏名公表だ。

 

 私が調べた限り、東京都の練馬区や杉並区では既に行われている。神戸市はこの2月の議会に、違反者への勧告措置や、勧告に従わない場合に勧告内容を公表できる条例改正案を提案している。

 

 東京都の杉並区がホームページ上で一定期間公表している「違反者名簿」を見ると、違反者の氏名・住所や違反した日時・場所、違反した内容や、自動車のナンバーや所有者名・所有者の住所まで一覧表にしている。これは、業者にとって相当なプレッシャーになるだろう。

 

 本市は周辺7市と歩調を合わせながら対策を行っているということだ。東京都の八王子市内にも買い取り業者があるが、県央地域の自治体は、八王子市にも通じる国道16号が近いため、業者に狙われやすい側面があるということだ。周辺市との連携を行う上で、違反業者の公表を含めた毅然とした対応を行うよう、議論をリードし、是非実現につなげてほしいと要望する。

 

 また、パトロールについては、業者が持ち去っている時間帯とされる夜間にも実施し、対策強化に努めてほしいと要望する。念のため付け加えるが、資源ゴミを夜間に出してはいけない。今の要望は夜間のゴミ出しを推奨しているものではない。

 

 

 

 3.狭隘道路の拡幅

 

 先日、依頼を受けて、県立大和南高校近くの道路を現地視察した。ここは高校生も自動車も通るが、大変狭い道路だった。計測すると道幅は約2・5メートルだった。高校生にとって危険性が高く、公益にかなうのであれば、道路の拡幅を検討したほうが良いのではないかと考えた。このケースに限らず、私が住む桜ケ丘東側のエリアは、幅員4メートル未満の狭隘な、つまり狭い道路が多い。

 

 大和市と同様に人口が密集している地域の例でいうと、東京都足立区では、地震の際の危険度を把握し、建物の倒壊や火災の危険度が高い地域を重点地域、特定地域に指定して、防災まちづくり事業に取り組んでいる。杉並区では、後退させた私有地部分に、障害物を設置することを禁止しようと条例改正を目指しているということだ。そこで3つ質問する。

 

①市内に狭隘道路はどの程度あるのか

②狭隘道路の整備実績はどうか

 

■街づくり計画部長(一括答弁)
 建築基準法で定められた幅員4メートル未満の道路、いわゆる狭隘道路は市内約5200路線のうち、約500路線だ。狭隘道路に面して建築行為を行う際には、道路中心から2メートルまで後退する必要があるが、公道に面する場合、その用地を道路として取得する「狭隘道路用地取得事業」を昭和62年度から実施している。これまでに2823件の申請があり、1668件の用地を寄付などによって取得して参った。

 

①防災の観点からも、狭隘道路を解消するための重点地域を設定し、順次拡幅を進めていくべきだと考えるがどうか

 

■街づくり計画部長
 本市ではこれまで、防災性の向上のため、土地区画整理事業等により、都市基盤整備を進め、市街化区域の7割を超える地域において、狭隘道路を解消している。しかしながら、依然として狭隘道路が多く、木造住宅が密集している地域もある。狭隘道路の整備については引き続き進めて参るが、合わせて初期消火が可能となるスタンドパイプ消火資機材の設置や、建築物の耐震化・不燃化対策などにより、こうした地区を重点に、防災性の向上を図って参りたいと考えている。

 

<答弁を受けた要望>

 答弁をいただいた。基礎自治体の事例ではないが、報道によれば、東京都では、震災発生時における木造住宅の密集地で延焼を防ぐため、来年度から、道路拡幅の用地買収や移転補償などにかかる費用の半額を区に補助することにしたそうだ。先ほど、私の前の質疑で市長の答弁にもあったが、大和市は火災に弱いのではないかという指摘だった。今回の私の質問に対する市の答弁では、防災の強い街づくりについては、耐震化や不燃化対策が中心ということだったが、是非、狭隘道路の解消についても積極的に取り組んでいただきたいと要望する。

 

 

 

 4.政治的中立性

  

 これは昨年の12月議会に続く、新たな質問となる。

 

 11月には文化創造拠点がオープンします。今議会に提案されている来年度の一般会計予算案では、文化創造拠点に図書館機能を移した後の現在の図書館については、業態変更して使用していくための関連経費も盛り込まれている。

 

 現在の図書館は、市民団体向けに部室50室を有料で貸与する方針だということだ。やるのであれば、きちんと基準を設けてほしいと考える。その際、本市の政治的中立性が疑われることのないよう、政治的な色彩が強い団体に貸すことは控えるべきだと考える。

 

 さて、今議会の文教市民経済委員会で、市側は、いわゆる「平和団体」に対する後援名義を今年度に5件承認したことを明らかにした。後援名義が承認された団体・事業を私が調べてみた。そのなかで私が、大和市革新懇のイベント以外で疑問に感じたのは、昨年5月に大和駅周辺で行われた「第27回かながわピースフェア大和平和まつり」だ。

 

 インターネット上で公開されているダイジェスト動画を視聴すると、舞台上では、ある特定政党の参院議員が、同党の県議2人をバックに演説。舞台の前には、その政党の県内の地方議員十数人がズラリと並んでいた。

 

 関係するブログなどを調べると、平成21年5月のこのイベントでは、名前入りのタスキをかけた衆院選立候補予定者が壇上で紹介されたそうだ。これは特定政党の候補者の支持を広げるための政治活動であると言えるだろう。そこで5つ質問する。

 

①現図書館で今後活用が検討されている部室の選定基準はどうなっているのか

 

■文化スポーツ部長
 図書館移転後の建物を改修して整備する部室については、文化芸術団体をはじめとして、広く市民活動のためにご利用いただくことを想定しており、当該施設に入居を予定している市民活動センターの機能として位置づけることを考えている。★市民活動は「新しい公共を創造する市民活動推進条例」に定義されているが、政治に関するものを主たる目的とするものを除く、と規定されていることから、今後検討する部室利用者の選定基準においても、この考え方を踏襲することになると考えている。

 

②「平和団体」の定義は何か

 

■文化スポーツ部長
 本市は昭和60年に国是である非核三原則の遵守、核兵器の廃絶と軍縮、真の恒久平和の実現などをうたった平和都市宣言を行っている。この宣言の趣旨を尊重し、その実現を目指して活動している団体を平和団体と考えている。

 

③一般論として伺う。特定政党の県内の議員がズラッと並んでいた。その前で、特定政党の国会議員が政治的主張を訴えた。このようなイベントは、行政が後援する事業としてふさわしいと考えるか

④同様に一般論として伺う。ある政党の立候補予定者がタスキを付けて壇上に登場。立候補予定者として紹介された。このようなイベントは、行政が後援する事業としてふさわしいと考えるか

 

■文化スポーツ部長(一括答弁)
 ★市が後援した事業において、ご質問のような事例があることは、望ましいことではないと考えている。ご存知のように、後援名義の使用承認事務は、申請書による形式審査なので、審査時に行政側が事業の詳細まで把握することは難しい面がある。さらに、★事後に起きた一つの出来事のみで、事業全体の適否を判断することも、また、難しさがあるので、事前に申請者に確認したり、注意を促したりすることで、対応して参りたいと考えている。

 

⑤「かながわピースフェア」に対しては、いつから後援名義を出したのか。その理由は何か

 

■文化スポーツ部長
 当該事業の後援名義については、平成24年から使用を承認しているが、大和市の後援名義に関する要領に基づいて審査を行った結果、広く市民を対象とした平和関連事業であると判断しているものだ。

 

 

 答弁をいただいた。このイベントに対する後援名義は平成24年以降ということだった。タスキをかけている衆院選立候補予定者の紹介が確認できたのは、これより前の平成21年のイベントなので、後援事業の中で実際にこのような事態があったのかどうかについては、私自身としては確認していない。

 

 ただ、市が後援した事業でそのような紹介が行われるとすれば、政治的中立性の確保を定める市の後援名義要領に違反すると捉えられる。単なる来賓紹介とは違った意味合いを持つからだ。少なくとも、特定政党の議員だけが舞台の上や舞台前にズラッと並ぶイベント。これは実際に後援名義が承認されたなかで行われたわけだが、市の後援事業としてふさわしくないことは言うまでもない。

 

 先ほどの部長答弁で「審査時に把握するのはなかなか難しい面がある」という話があった。それはその通りだと思う。後援名義承認の適正化をはかる上では、いわゆる「PDCAサイクル」の確立が必要だ。不適正な後援名義承認が、これだけ相次いで判明している以上、市として、後援名義が適正なのかどうかを事後にチェックすることも必要だと考える。そのためには、市が、政治的中立性が保てない疑いがある後援イベントに職員を派遣して、確認することが求められると考える。

 

 

 

5.教育問題 

 

 運動会の組体操で骨折するなどの事故が、大きく報じられている。昨年度は全国の小学、中学、高校で組体操に参加した児童・生徒のうち8596件のケガが報告された。

 

 今年に入って組体操を見直す動きが相次いでいる。大阪市教委は来年度からピラミッドとタワーを禁止。千葉県流山市は廃止したそうだ。馳浩文部科学大臣は2月9日の記者会見で、今月末までにガイドラインを示す方針を明らかにしている。そこで2つ質問する。

 

①組体操によって、これまでに骨折などの大きなケガは報告されているか

②組体操の実施状況と今後の考えは?

 

■教育部長(一括答弁)
 今年度の組体操の実施校は、小学校は5、6年生を中心に19校中17校、中学校が全学年男子を中心に9校中5校となっている。高さを伴う技としては、★ピラミッド型では小中学校で各1校が7段、その他が3段から6段、タワー型では小学校2校と中学校1校で4段、その他が2段または3段となっている。★過去3年間の組体操による骨折などの件数は小学校では7件、中学校では1件あった。


 学校では、今後も児童生徒の発達段階に合わせた無理のない技を設定するとともに、★高さを伴う技では特に安全に配慮し、十分な人数で補助するなど、事故の予防に努めながら実施して参る。

 

<答弁を受けた要望>

 答弁をいただいた。大阪府八尾市で行われた「10段ピラミッド」のような危険性が高いものは、本市では実施されていないことが確認できた。一方、骨折などのけが人も出ているということだった。

 

 私は組体操について、一定の教育的意義があると考えている。児童生徒に対し、達成感、満足感や連帯感を与えるものだからです。保護者のなかでも、組体操を見て感動された方も多いことでしょう。組体操に一定の危険性があるからといって、短兵急に「中止せよ」とはならないと考える。

 

 とはいえ、子供の命を預かる学校現場として、児童生徒の安全性を守ることは大切だ。よって、安全性に十分な配慮を重ねつつ、「教育的意義がある」として続けたいのであれば、続けるべきだと考えます。

 

 報道によれば、東京都の有識者会議は昨日の会合で、「一律に中止することで問題が解決するとは考えにくく、現場で議論することが大切だ」などとする報告案をまとめたそうだ。これは大いに参考になると考える。

 

 なお、組体操のやり方、つまり児童生徒一人当たり何人分の荷重がかかるかについては、数学的な理論がある。大阪経済大学の西山豊教授によると、平面型の4段ピラミッドの場合、最下段の真ん中の2人は、一人当たり2.125人分の荷重がかかる。ここ(参考資料)に示している。一方、「三角錐」の「立体型」の7段ピラミッドの場合、土台となる一部の児童生徒には、2・4人分の荷重がかかる。

 

 私はこの問題を調べた結果、段数の高さが、そのまま危険性に直結するものではないとの結論に至った。重要なのは、組み方や、その荷重に耐えられる児童生徒が実際にいるかどうかだ。相当の負荷がかかる場所に、それに耐えられる頑丈な児童生徒がいなければ、組体操のピラミッドは崩れてしまう可能性が高いわけだ。

 

 私は専門家ではないが、市教育委員会としては、様々な知見に基づき、児童生徒一人当たりの荷重も考えつつ、安全性への配慮を最大限行ったうえで、組体操を続けていただきたい。そのように要望をするところだ。

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