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 大和市議会 小田の一般質問

 *実際の質疑では、大項目(テーマ)ごとに、まとめて質問したり、まとめて答弁している場合があります。ここでは読みやすさを重視して再編集し、質問の直後に答弁を記しています。正しくは、市議会HPの会議録をご参照ください。

 *「★」印は、市側の答弁のなかで、私がポイントだと捉えた部分です。

令和2年6月議会

1.新型コロナウイルス感染症

 

(1)市の基本的な考え方

 皆さんに伺います。新型コロナウイルス感染症は怖いですか? いろいろお考えはあると思いますが、私には、国民全体が過剰に恐れすぎているように思えてなりません。

 

 厚生労働省の人口動態調査によると、季節性のインフルエンザによる死者は平成29年が2569人、30年が3325人、昨年が3571人です。厚労省のホームページによると、病気の流行によって直接、間接的に死亡した人数を推計する超過死亡という概念があり、これによると季節性インフルエンザでは毎年1万人程度が死亡していると見積もられています。

 

 一方、新型コロナウイルスによる死者の数は国内で900数十人にとどまっています。現段階における被害はインフルエンザを下回っています。人口あたりの死者数は、世界ではかなり少ない方です。

 

 経営コンサルティングで著名な「ボストン・コンサルティング・グループ」はこの4月、新型コロナをめぐる世界9カ国の意識調査の結果を公表しました。「最悪の状況を脱していない」と回答した割合は日本が82%でトップでした。マッキンゼー社が世界30カ国を対象に実施した「新型コロナウイルス後の各国経済復興楽観度」のチャート図では、日本の楽観度合いは最下位でした。

 

 つまり、日本はコロナ禍の被害が少ないのに世界の中でもとりわけ悲観的であるといえます。「安全」「安心」という言葉で言えば、「安心」感を持てていないのでしょう。ワイドショーを中心とするメディアや専門家がひたすら不安や恐怖心を煽り立てているため、インフォデミックが生じているのではないか。私はこのように捉えております。

 

 もちろん、第2波が来た場合に被害が今回と同程度に抑え込めるかはわかりません。深刻な被害が出ている国もありますし、用心するに越したことはありません。ただ、過度に恐れる必要はないのではないでしょうか。

 

 一方、緊急事態宣言をはじめとする自粛要請によって、日本社会がここ数か月間止まりました。経済的な被害は大きいと見られ、飲食店を中心に財政支援を求める声が上がりました。私もその話を伺いました。コロナ禍は人災の側面も大きいがゆえに、行政としても普段以上に丁寧な対応が求められます。

 

 政府は大型補正予算を組み、国債を増発しています。今年度の一般会計予算の歳出総額は160兆円に達し、新規国債発行額はなんと90兆円。経済再建は至上命題ですし、仕方ないことかもしれませんが、財政の大幅悪化のツケは将来の世代に先送りされます。

 

 一方、地方自治体は国のように簡単に借金はできません。通貨発行権もなければ、日銀に引き受けてもらうこともできません。極論を言えば、インフレを起こして借金棒引きにすることもできません。なので、負担を先送りすることのないよう、国以上に中長期的な視点を持たねばなりません。

 

 そこで2点伺います。

 

①新型コロナウイルス感染症の問題に関する市の基本的な考え方はどのようなものか

■市長室長

 全国的な広がりを見せた新型コロナウイルス感染症につきましては、本市においても、市民の皆様の生活に大きな影響を及ぼしており、いまだ収束しておりません。こうした感染症への対応は、国や県が対策を進めていくこととなりますが、基礎自治体は市民生活に直結しており、国や県にはないきめ細かな対策ができるものと考えており、今後も引き続き必要な対策に取り組んでまいります。

 

②補正予算の措置に対する基本的な考え方はどうか

■政策部長

 新型コロナウイルス感染症に関し、国、県、市がそれぞれの役割に応じて取り組みを進めるなか、本市においても、対策等に必要な経費については、その重要性を踏まえ、補正予算による措置を基本としつつ、可能な限り迅速かつ柔軟に対応しているところです。今後も市として実施すべき事業につきましては、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金をはじめとする国の補助制度なども積極的に活用しながら予算を適切に確保してまいります。

 

 

 (2)施設の開館・休館

 

 緊急事態宣言が5月25日に解除されました。一方、大和市の文化複合施設シリウス、中央林間図書館やベテルギウス、ポラリス等は今月末まで休館の予定です。屋外のスポーツ施設は8日から開館しましたが、利用者からは早期開館を望む声が出ていました。

 

 新型コロナをめぐっては、この秋から晩秋にかけて第2波や第3波がやってくるかもしれません。その際、世の中の空気や政府の対応が冷静なのかヒートアップするのかは分かりませんが、再び休館を余儀なくされる可能性も捨てきれないでしょう。私としては、第1波の教訓を踏まえれば、むやみに自粛するのではなく、市民サービスを提供する環境はできる限り整えておくべきだと考えます。もちろん、再び緊急事態宣言が発令されれば休館を余儀なくされますが、そうでない限りは、できるだけ開館してほしいと希望します。

 

 そこで1点伺います。

①第2波、第3波が来る場合も含め、施設の開館・休館に関する市の考え方はどうか

■市長室長

 第2波、第3波が懸念されるなか、各公共施設の開館・休館につきましては国の方針や県の要請に基づくとともに、市内の感染状況などを踏まえ、総合的に判断してまいりたいと考えております。

 

 

(3)学校現場

 

 大和市内の小中学校では分散登校が始まりました。学校の再開を待ち望んでいた児童・生徒らも多いことと存じます。元気に登校する姿を見かけるとこちらも嬉しくなります。

 

 全国的に一斉休校が始まったのは3月でした。以降、通常の授業は4カ月間も実施できていません。これは1年間の3分の1に相当します。

 

 日本経済新聞の昨日付朝刊1面の記事によると、全国主要市区の公立小中学校の9割が夏休みの短縮に踏み切るということです。大和市でも、通常は40日程度ある夏休みを8月7日から8月18日の12日間に短縮します。これで1カ月は取り戻すことができますが、それでもまだ足りません。たとえば、授業時間を一コマあたり5分間短縮して、その分一日一コマ増やすなど、創意工夫が求められるでしょう。

 

 特に中学1年生は学習内容が急に難しくなります。中学3年生は高校受験を控えています。教職員の皆さんも夏休み返上となり大変だと推察しますが、学びの機会を保障すべく頑張っていただきたいと存じます。

 

 さて、政府の専門家会議によって「新しい生活様式」が推奨されています。社会再開と感染症対策を両立させるための指針です。三密回避や咳エチケット、手洗い励行等の重要性は理解します。ただ、2メートルのソーシャル・ディスタンス、会話をしない横並びの食事、誰と会ったかをメモっておくといった箸の上げ下ろしを規定するような生活指導については、過剰ではないかと個人的には捉えています。人間性を疎外しているとさえ思います。

 

 「新しい生活様式」はどこまで忠実に実践すべきものなのでしょうか。教室内で子供同士1、2メートルの距離を空けていたら、正常な授業は成り立ちません。「友達はコロナかもしれない。自分もコロナかもしれない」と疑って他人との距離感を保つことは、分別のある大人なら良いですが、子供たち、特に低学年の児童にとっては心身の発達で悪影響を及ぼしかねません。

 

 学校教育をめぐり、世間ではオンライン教育の充実も叫ばれています。「zoom」や「slack」「mural」といった多様なアプリを使いこなせれば、オンラインでグループ学習を行うこともできます。大変便利な時代になりました。

 

 ただ、オンライン授業は一斉休校などの非常時の補助的な手段であるべきです。授業は対面が基本です。特に義務教育は学習以外にも社会性を培い、人間性を育む大きな役割があります。これらは決してオンラインでは補えません。

 

 そこで3点伺います。

 

①学習の遅れを取り戻すための取り組みについて。

■教育長

 新型コロナウイルスによる未曽有の世界的災禍が子供たちにもたらしたものは、単なる学習の遅れだけではなく本来、学校で体験するはずであった多くの成長の機会さえも奪われたことです。

 

 教育委員会といたしましては、子供たちの学習の遅れを取り戻すために学校と協力して再開後の子供の学びが充実したものになるよう、教科の年間指導計画の見直しを何度も行い、単元ごとの学習内容を重点化するなどの工夫をし、学習の準備を進めてまいりました。さらに、時間の少ないなかでも子供たちの成長に欠かすことのできない社会科の「まち探検」のような体験的な学習についても、必要に応じて工夫して取り入れることで、貴重な学びの場を提供できると考えております。

 

 今後も学校との連携を密に行い、子供たちの学習の充実のために放課後寺子屋やまとを効果的に活用していくなど、きめ細かな指導を通して継続的な支援を行ってまいります。

 

②今後の学級経営について

■教育部長

​ 国が示す新しい生活様式を踏まえた学校の教育活動を展開していくにあたっては、手洗いや咳エチケット、換気といった基本的な感染症対策を徹底し、感染リスクを可能な限り低減することが必要です。学校では、教室の座席の間隔を離したり、3つの密を避けたりするなど身体的距離を確保する工夫を行っております。そのうえで、子供たちに感染症対策の正しい知識を身につけさせ、協働的な学びを行い、子供たち同士の心の触れ合いを大切にしながら学級経営を行うよう努めてまいります。

 

③オンライン教育についての考えはどうか。

■教育部長

 オンライン教育は、インターネットを介した同時双方向型の授業や動画の視聴、端末を用いたドリル教材に取り組む学習などが考えられます。今後はオンライン教育を推進するための準備を進めるとともに、すべての児童・生徒の学びを保障できるよう環境を整備してまいります。

 

 

(4)震災・台風時の対応

 

 最悪の事態はいま、大震災が起こることです。震災発生時には避難所が設置されることとなっていますが、避難所に住民が押し寄せれば密にならざるをえず、感染症対策とは矛盾します。混乱を招きかねません。震災はいつ起きるかわかりませんが、台風は毎年やってきます。昨年の台風19号では大変多くの住民が一時避難場所に集まりました。

 避難のあり方について市民から「どうすればよいのか」といった声が出ています。市としても、新型コロナの警戒期や蔓延期における避難方針を市民にきちんと示しておく必要があると考えます。

 

 そこで1点伺います。

 

①震災や台風が発生した際の避難所に対する市の考え方はどうか

■市長室長

 本市では、密集を防ぐための分散避難と避難所の感染症予防対策を基本的な考え方としております。具体的には、避難所等への密集を避けるため、真に避難が必要な方に避難していただくこと、友人宅等への避難や避難者同士の十分な間隔を確保することや、避難者自身による感染予防の徹底、体調が優れない方などの専用スペースを確保するなどを実施します。こうした市の取り組みは、平時から市民の皆様へ機会をとらえて周知してまいります。

令和2年9月議会

​1.脱ゼロリスクの勧め

 

(1)リスクマネジメント

 

 「介護施設に母親を預けているが、新型コロナウイルス感染症の影響で、直接面会ができない。面会してもタブレット越しでは、様子が分からない」

 

 地元の住民から、こんな悲痛な話を伺いました。面会が制限されているのは、感染症対策が理由です。ただ、仄聞した話では、仮にその施設で感染者が発生したら、施設の評判が落ちてしまい、経営が成り立たなくなってしまう可能性があります。だから絶対に感染者は出したくない。このような事情もあるのだそうです。肉親に面会したくてもなかなか会えない。とても悲しい話だと思います。

 

 新型コロナウイルス感染症に対する緊急事態宣言は5月25日、全面的に解除されました。この感染症は現在、SARS、結核、鳥インフルエンザと同レベルの2類相当に位置づけられているとされます。実際には「外出自粛要請」「建物の立入制限」なども加えられ、エボラ出血熱やペストといった1類よりも厳格な対応がとられましたが、政府は見直しに向けて検討作業を始めている。新型コロナウイルス感染症を原因とする死者は現在、1500人程度にとどまっており、早期の見直しが求められるでしょう。

 

 コロナ禍と言われるように、新型コロナウイルス感染症はある種、災害です。その対策をめぐってはリスクマネジメント、リスク管理の視点が欠かせません。

 

 現在はリスクが多様化している時代です。社会的なリスクとして原発事故、BSE、遺伝子組み換え食品などの食の安全、耐震偽装事件にみられる住環境の安全、古くは公害を代表例とする環境問題などが挙げられます。個人に関するリスクで代表的なものは失業、病気、火災、交通事故などがあります。これらに対しては保険制度がセーフティーネットとして機能しています。

 

 生きていれば、犯罪や暴力の被害に遭うかもしれません。日本は平和で安全性が高い国ではありますが、世界的には、地域によってはテロや紛争、戦争が起きる可能性もあります。

 

 コロナ禍をめぐって「ウィズ・コロナ」というキャッチコピーが流行しましたが、現代はリスク社会であり、「ウィズ・リスク」でもあります。今回の質問にあたり、リスク学の文献やテキストをいろいろ読みましたが、リスク学において、ゼロリスクを目指した極端な予防原則はとるべきではない。有識者はこのように指摘をしています。ゼロリスク、つまりリスクがまったくない状態を求めることは不可能であり、現実的ではないからです。

 

 人類が撲滅した感染症は天然痘などごくわずかです。新型コロナウイルスを撲滅することは難しいと言わざるを得ません。「ウィズ・コロナ」という言葉が流行り始めたのは、撲滅できる可能性の低さに気づき始めたから、とも言えるでしょう。

 

 さて、リスクマネジメントにおいては、リスクには2つのトレードオフがあるとされます。トレードオフとは、何かを得ると何かを失うという関係性を意味します。一つはベネフィット、便益とのトレードオフです。もう一つは、別のリスクとのトレードオフです。

 

 これをコロナ対策に当てはめてみます。コロナ対策を強化しすぎると社会経済が回らなくなります。残念ながら、感染症リスクを軽減しようと対策を強化すればするほど、社会経済を通常に回す便益は失われてしまいます。これは「命か経済か」といった議論が代表例です。

 

 結婚を例に考えてみます。経済産業省の「特定サービス産業動態調査」によると、今年4月から6月までの3カ月間で、結婚式場の取扱件数は1410件にとどまりました。前年同期の2万3244件のなんと16分の1です。尋常ではない減少率です。この期間は緊急事態宣言が発せられ、外出の自粛が求められていたので、挙式のキャンセルが相次いだとみられます。

 

 実際の婚姻数はどうだったのでしょうか。公表されている厚生労働省の「人口動態統計速報」のデータを用いて、今年4月から6月までの婚姻件数を足し合わせてみました。すると、11万4863件でした。前年同期の17万5197件と比べて34.4%減。つまり、3分の1が減ったことになります。昨年5月は新元号「令和」が始まった時期だったため、令和婚が相次ぎました。それを考慮しても、大幅な減少率です。

 

 婚姻数自体が減少すれば、それに応じて出生数も減ります。出産には時間がかかります。ですので、コロナ禍の影響が数値として現れてくるのは来年以降になるでしょうが、少子化の傾向にさらに拍車をかける可能性が高いと考えられます。民間のシンクタンクからは、来年の出生数は1割減るという予測も出ています。昨年86万人だった出生数は来年、80万人を割るかもしれません。

 

 感染症対策として様々な活動を自粛し、人間と人間の接触機会を減らせば、新たな生命の誕生が減るという「別のリスク」を抱えるわけです。被害者が声を上げるわけではないので一見、見えにくいですが、これは隠れたリスクと言えるでしょう。

 

 リスクマネジメントにおいては、リスクとベネフィット、リスクと別のリスクとのバランスを慎重に検討することが重要です。私から言わせれば、今でも過剰に自粛が行われている背景には、新型コロナウイルス感染症に対するリスク評価が定まっていないことがあると考えられます。

 

 さて、私は平成28年9月議会において、メディアリテラシー教育の推進を要請しました。平成30年6月議会においては義務教育における防災部の設置を含め、防災教育の充実を求めました。今回はリスクリテラシーやリスク教育の導入を提言したく存じます。リスクリテラシーとは、リスクの度合いを正しく見極めて対処していく力のことです。

 

 大阪府では、内閣府食品安全委員会との共催でジュニア食品安全ゼミナールを平成26年に開催しています。これは対象を食品の安全に絞ってはいるものの、リスクリテラシーの一環と捉えることができます。

 

 リスクリテラシーやリスクに関する教育は日本ではさほど行われていないようです。ですが、コロナ禍における我が国の対応を見るに、政府にしても、とりわけメディアにしても、リスクリテラシーが欠如していたのではないか。このように考えます。国民の間でもリスクに対する考え方が十分に普及しているとは言えないようです。

 

 リスクマネジメントにおいては、リスクの比較が重要になります。厚生労働省の人口動態統計によると、昨年1年間の国内の死者は140万人いました。死因別では、がんは37万人、心疾患は20万人、脳梗塞などの脳血管疾患は10万人です。肺炎でも10万人、糖尿病で1万4000人がお亡くなりになっています。これらの病気は、他人に感染させる可能性がある感染症とは異なりますが、死亡率が新型コロナウイルスより高い病気は多数あるわけです。

 

 感染症という分野は専門家でないとリスク評価が難しく、情報の非対称性が生じがちです。この冬どうなるかの見通しも定かではありません。ただ、冷静にリスクを見極めることができていれば、ここまで自粛する必要はなかったのではないか。このように考えます。

 

 感染症リスクをどう評価するかはともかく、リスクについて主体的に考えて判断することの重要性はもっと広まって然るべきでしょう。たとえば、総合学習の時間や、学年全体の講習でも良いのですが、リスクと向き合う教育を導入してみてはいかがでしょうか。

 

①本市におけるリスクマネジメントの考え方は?

■市長

 リスクマネジメントにおいて様々な考え方があることは承知しております。近年、自然災害だけでなく、新型コロナウイルス感染症など社会的な影響が大きく多様化した新たな危機が発生しております。このようなリスクに対しましては、市民の皆様の社会経済活動が大きく影響を受けています現実を踏まえますと、基礎自治体である本市は、これまでと同様、今後においても、市民の皆様の生命、身体、財産を守り、安全、安心な市民生活が送れるよう、可能な限り、様々な施策を展開することこそ最も重要であると考えております。

 

②リスクと向き合う教育を取り入れられないか?

■教育部長

 各学校におけるリスクと向き合う教育の一つの例といたしましては、防災教育において、自らの安全を確保するための行動ができるようにすることや、日常的な備えをすることなど、児童生徒が災害に適切に対応する力の育成に努めております。今後も日頃の教育活動のなかで、発達段階に応じて、自分の命や大切な人などを守るため、児童生徒が的確に情報を把握し、主体的に考え、状況を踏まえて判断し行動できるよう取り組んでまいります。

 

 

(2)新型コロナウイルス感染症に関する小中学校の状況

 

 新型コロナウイルス感染症に対する不安を理由に、学校を欠席する児童生徒が相次いでいます。報道によると、名古屋市の小学校では1校あたり1日2.18人が感染不安を理由に欠席しました。岡山市内の小中学校では、7月時点で1日あたり約70人が同様の理由で欠席したということです。さいたま市では、調査を実施した6月15日から7月20日の間、1日も登校していない子供が48人いたといいます。これらは俗に「自主休校」とか「自主欠席」と言われています。

 

 文部科学省は、合理的な理由があれば欠席扱いとせず「出席停止」として扱うことができるとしています。ですが、新型コロナウイルスをめぐっては、子供は重篤化しにくいことがデータとして明らかになっていますし、現時点で子供のコロナ死者は確認されていません。感染症リスクを恐れるあまり、勤労、納税と並んで国民の三大義務の一つである教育が損なわれてしまうのはいかがなものでしょうか。このように考えます。

 

①感染不安を理由とした自主欠席の状況はどうなっているか?

■教育部長

 平常授業が再開した7月1日から8月31日までの2カ月間に、感染不安を理由に学校を休んだ1日の平均児童生徒数は、小学校では1校あたり約2名、中学では1校あたり約1名となっております。各学校におきましては、児童生徒が安心して安全に登校することができるよう、感染予防策を講じるとともに、適切に教育相談を行い、児童生徒や保護者の不安を解消するよう努めております。

 

【答弁後の意見・要望】

 意見要望を述べます。コロナ不安を理由とした自主欠席は、小中いずれも3学年に1人ぐらいいるということでした。答弁では省略されていましたが、教育部の調査によると、のべ人数は7月は小学校で823名、中学校169名、8月は小学校473名、中学84名ということです。つまり、この2カ月間に小学校ではのべ1296名、中学校ではのべ253名、総計1549名が自主欠席をしたことになります。市内の自主欠席が他の地域と比べて相対的に多いのかどうかは分かりませんが、個人的には「結構いるなぁ」という印象を受けました。

 

 学校現場では、自主欠席をしている児童生徒に対しオンライン授業や個別課題、教育相談などを行っているとうかがいます。現場は苦労が多くて大変だろうと推察します。学校は勉強だけではなく社会性を育む場でもありますから、学校に復帰するよう指導してほしい。そのように要望をします。

 

 本市の小中学校では、『もしも・・・自然災害が起こったら』と題した防災教育資料を4月から配布し始めたとうかがいます。防災教育を充実したことは大変良いことだと捉えます。ここでは、さらに一歩進めていただき、リスクリテラシーについても資料に盛り込んでいただきたい。このように要望をいたします。リスクについて主体的に考えて対処する能力は、子供たちが世の中に出ていく上でも必要不可欠だと考えるからです。

 

 リスクリテラシーをめぐっては、化学薬品メーカーである株式会社ウエノフードテクノがまとめた「リスクと上手につきあおう」というパンフレットが、インターネット上で公開されています。リスクに関するエッセンスがイラスト付きでとても分かりやすくまとまっているので、是非、参考にしていただければと存じます。

 

 さて、政府は感染症を防止するための「新しい生活様式」を推進しています。それは感染症拡大を抑えるための暫定的、時限的な措置にとどめるべきである。このように私は考えます。テレワークやデジタル化といった分野は進めればよいと考えますけれども、アフターコロナ、ポストコロナといった今風な言葉で未来永劫、定着すべきではありません。

 

 必要な感染症対策は進めていかなければなりませんが、コロナの収束状況に応じて「新しい生活様式」を段階的に縮小し、将来的には廃止し、ビフォーコロナに戻すことを望むものであります。

 

 市政にとって市民の生命、身体、財産を守ることは最重要の課題です。そのことは論を待ちません。ただ、リスクを正しく判断できているのかどうかを客観的に見直してみることが大切です。ゼロリスクを追求することは困難ですから、許容リスクがどの程度にあたるのか。これらを十分に検討しながら、市政運営にあたっていただきたい。そのように考えます。

 

 川崎市健康安全研究所所長で、政府の専門家会議のメンバーである岡部信彦さんは、月刊誌『中央公論』5月号の「ゼロリスクの感染症対策はありえない」と題したインタビュー記事で、コロナ収束についてこう述べています。

 

 「収束の定義はそれぞれイメージが違う。今ぐらいのくすぶり状態が普通だと思えば収束と捉えてもいい。重症者はちゃんと病院に入れる。パニックにならないで落ち着いて過ごせる。そうなれば収束と考えられる」

 

 これは5月号なので4月頃の話だと思いますが、岡部さんは、厚生労働省の「指定感染症としての措置・運用の在り方に関するワーキンググループ」の座長に就任しました。岡部さんは学校の一斉休校や緊急事態宣言に慎重な立場でした。感染症リスクを過大視しない専門家を座長につけたということは、注目に値します。私はそこに一縷の希望を見出します。一日も早く、「元の日常」に戻ることを願うばかりですし、本市としても元の日常に戻す努力をしていただきたい。そのように要望します。

 

 

2.空き家対策

 

 我が国の人口は大都市部に集中しています。特に首都圏、東京都に人口が集中しています。このようななか、地方を中心に空き家が増加しています。中長期的に空き家問題はさらに深刻化すると見込まれます。

 

 空き家は、草木が生い茂って隣の家に迷惑をかけるなど衛生面で課題があります。また、古い家屋は震災時に倒壊する危険性もあり、地域の防災力を低下させます。街中、空き家ばかりになってしまえば、ゴーストタウンになる懸念もあります。もちろん、大和市は現在でも人口が微増していますから、すぐにそうなるというわけではありません。ですが、人口が減少に転じ、その傾向が強まっていけば、遠い将来にその可能性もないわけではないでしょう。

 

 土地や家屋の所有は民間の経済行為です。なので、行政は手をつけづらい分野です。所有者が不明な土地・家屋も問題化していますが、空き家の所有者を把握するのが難しく、行政は及び腰になりがちです。このため、議員立法による空家対策特別措置法が成立し、平成27年に全面的に施行しました。

 

 法整備を受けて、地方自治体のなかでは空き家を撤去するための代執行に踏み切るところも出てきています。神奈川県内では横須賀市や厚木市が実施しています。危険な空き家がなくなれば、近隣の住民は安心して暮らせます。

 

 先の環境建設常任委員会では、本市における空き家実態調査に関する質疑が若干ありました。ただ、その調査結果がどのようなものだったのか、よくわかりませんでした。本市において、倒壊する可能性がある危険家屋はどの程度存在するのでしょうか。

 

①昨年度実施した空家等実態調査の結果はどうだったか
②調査結果を活かした今後の取り組みはどうか 

■街づくり計画部長(一括答弁)

 空家等実態調査は水道閉栓情報をもとに抽出した建物などを対象に現地調査を行い、空き家等と思われる所有者等に対し、居住、使用状況、管理状況、意向などを把握するためのアンケートを実施した結果、空き家等は665件であり、倒壊の危険性がある建物はありませんでした。

 

 今後は調査結果を整理分析し、空き家等の実態を踏まえた支援策や活用方法などの検討を進め、今後予定されている空家等対策の推進に関する特別措置法の改正に即した空家等対策計画を策定し、空き家等の管理不全の抑制および解消に向けた総合的な対策に取り組んでいまいります。

 

【答弁後の意見・要望】

 倒壊の危険性がある空き家はないということでした。ただ、倒壊危険性に関する調査は本格的なものではなく、調査員による目視とうかがいます。なので、字面通りに受け止めてよいのかどうかは、分かりませんが、いずれにしても、ないことは良かったのではないかと思います。

 

 今年1月に代執行を実施した厚木市では、空家等対策計画で危険な特定空き家を発生させないことや、管理不全の空き家を25%以上減らす数値目標を盛り込んでいます。同市では、空き家の解体、取得費用に対しても助成制度を創設したということです。

 

 答弁にはありませんでしたが、本市の総合計画によると、今年度は空家等対策計画の策定を準備し、来年度に計画を策定し、令和4年度には協議会を運営することになっています。厚木市などの先進事例も参考に、空き家を減らす取り組みを強化してほしいと要望します。

 

 コロナ禍による全国的な自粛傾向で、飲食業は運営が大変苦しくなっています。地元の駅周辺ではこの間、居酒屋やスナックが閉店し、空きっぱなしです。コロナを理由とした自粛傾向が続けば、空きテナントが増えていく懸念もあります。それは街の賑わいを失うことにつながります。

 

 本市では、コロナに関する経済支援策として、県の交付金に上乗せする独自の施策を講じました。それについては大変評価するものですが、飲食店等が閉店して空きテナントが増えないよう、家賃補助をはじめ、経済支援策の拡充を要望します。

 

 最後に1つ申し上げます。今回の答弁はシンプルで簡素な内容でした。議員は市民の代表としてこの場に臨んでいます。議員に対して公平公正、公明正大な対応がとられないとすれば、それは市民に対して公平公正な態度で臨んでいないことを明らかにしているのと同じ意味を持ちます。そのような疑念を持たれないよう、是非ご留意していただきたいと強調しておきます。

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